戦争における性暴力を当然視・許容する語りに抗しつつ,また,生存戦略として行使される女性のエイジェンシー(行為主体性)を否定せずに,戦争と性暴力を問題化することはいかに可能か.性暴力当事者間の関係性のグラデーション(敵味方/同盟国/占領地/植民地,強姦/売買春/取引/恋愛/結婚)に注目し,さまざまな時代背景のなかでどのような加害・被害の語りが社会的に許容されるか,また,時期によって語りと聞き取りがいかに変遷するかを,さまざまな事例を比較して分析する。
上野千鶴子(うえの ちづこ)
1948年生.東京大学名誉教授,認定NPO法人ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)理事長.専門:社会学,ジェンダー研究.著書:『ナショナリズムとジェンダー』(青土社,1998年,新版:岩波現代文庫,2012年),『ケアの社会学――当事者主権の福祉社会へ』(太田出版,2011年)ほか。
蘭 信三(あららぎ しんぞう)
1954年生.上智大学総合グローバル学部教授.専門:歴史社会学,戦争社会学.著書・論文:『帝国以後の人の移動――ポストコロニアリズムとグローバリズムの交錯点』(編著,勉誠出版,2013年),「オーラルヒストリーの展開と課題」(大津透ほか編『岩波講座日本歴史第21巻』岩波書店,2015年所収)ほか。
平井和子(ひらい かずこ)
1955年生.一橋大学社会学研究科非常勤講師.専門:近現代女性史,ジェンダ...