小さな島の版画館で警備員として働く風見国彦は、毎日決まった時間に訪れるセーラー服の美少女に気づく。彼女の目的は、アントニスゾーンの版画『バベルの塔の崩壊』。閉館までその作品の前に立ちつくしている少女に、風見は興味を抱く。同じ頃、島では連続殺人事件が発生。殺人現場には必ず「バベルの塔」の絵が残されていた。殺人事件の犯人は誰か、バベルに秘められたメッセージは何か、そして美少女と事件の関係は?自作の絵画と小説を融合させるという全く新しい試みで注目を集める作家の、ミステリ・マインドに溢れる一作。
飛鳥部 勝則 (アスカベ カツノリ)
1964年新潟県に生まれる。新潟大学大学院教育学研究科を修了。1998年、『殉教カテリナ車輪』で第九回鮎川哲也賞を受賞し、作家デビュー。自作の油絵を付し、美術の知識を援用した独自の本格世界を築く