田中芳樹さんの本で、中国時代小説を好きになる人って多いんだろうな。この作品集では、5つの話を収めているが、中国史に詳しい人でないとわからないような人たちが主人公になっている。しかし、確実にその描かれている時代の空気を感じることができる。
とくに「黒竜の城」のホラーぶりと「天山の舞姫」のエキゾチズムが印象に残る。
「黒竜の城」明の都指揮使イシハは、黒竜江北岸の荒野で迷子になってしまった…。「天山の舞姫」安西都護府の武人・李炎は、サラセン軍が本営を構えるフェルガナに潜入して動静を探るために、カシュガルの街にやってきた…。「長安妖月記」唐の二人の武将・尉遅恭と薛仁貴が夜半に、宰相と国防大臣を兼ねる李靖の邸宅を訪ねた…。「白日、斜めなり」司馬氏によるクーデターが起き、魏の右将軍であった夏侯覇が蜀漢に亡命してきた…。「長江落日賦」梁の高官の息子・子鵬は、山中に隠棲する、南北朝時代の高名な学者、陶弘景のもとに、父の命で参上した…。
田中芳樹,1952年10月22日、熊本県生まれ。学習院大学大学院修了。1978年在学中に「緑の草原に…」で、幻影城新人賞受賞。1988年「銀河英雄伝説」にて第19回星雲賞受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 野望円舞曲〈9〉 (ISBN-13: 978-4199052019 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)